徒然なるままに


9★見られているということ 2023.12

 

 (迷惑にならないように気をつけつつ)電車の中で紙媒体の新聞を読むのがそれなりに楽しいひと時です.以前は大学の図書館にある新聞を読み比べることも楽しんでいましたが,配架上,立って読む必要があり,気に留めたものを中心にパパっとになっていました.通勤中,嫌でもまだ電車内にいなければならない環境は,新聞をじっくり読む機会を半ば強制的に与えられているようで,程良い刺激になっています(とはいえ,隅から隅までという性格ではないため,程々のところで切り上げて本に持ち替えます).

 座席の前に立って読んでいる際,時折座っている方の視線を感じることがあります.非難の目ではなさそうで,私が見ている面とは反対の面(折りたたんでいますので,同じ紙面の半分とも言えます)に目を向けているような…少々自意識が過剰かもしれませんが,同じ紙面を共有できている時間のように思えて,ふと楽しく感じられます.”面”が広いからこそ,かな,と.

 ちなみにもう一紙購読したいところですが,なかなかの悩みどころです.


7★その歳だからこそ切り取れるもの 2023.7

 

 写真展が好きです.デパートや公民館,大学の部活動など,いわゆるアマチュアの写真を見るのが好き,という方が正確だと思います.写真と向き合ったときの自分自身の反応を客観的に楽しんでいるといいますか,「これはなかなか」とか「おぉー」とか反応できる作品に出逢えた瞬間が面白いです(繰り返しですが,宇津川自身の反応です).少々傲慢な物言いになるのでしょうが,自分の感性の波とあう作品に出逢えることはとても嬉しく,良い刺激を受けます.もう10年以上前に,とあるクリエイターに「感性を磨き続けなさい」と言われたことも度々思い出します.

 先日,本務先の写真部が開いていた写真展に立ち寄りました.タイトルのつけ方もそうですが,(一応自分自身も経た)10代や20代頭だからこそ撮影できる構図だなぁ…などと感じる作品を鑑賞することができました.かなりの作品数がありましたが,1枚だけ,暫く見惚れる作品にも出逢えました.

 学生時代は部活動に縁遠い生活を送っていて,写真部など考えもしませんでしたが,入っていたら楽しかったかもなぁなどと,つい今更思ってしまったり.

一時期,影を撮影するのにハマっていました.これなら自信をもって自撮りできる!(巻き添えふたり)
一時期,影を撮影するのにハマっていました.これなら自信をもって自撮りできる!(巻き添えふたり)

5★新年度を迎えて 2023.4

 

 2023年度がスタートしました.法政大着任2年目です.昨年度よりもはるかに落ち着いた春を迎えています(それはそうでしょう).

 1日には新入生の前で教員自己紹介がありました.先に挨拶をされる先生方のお言葉のインパクトが強く,最後から二番目の宇津川はいろいろ候補を考えつつも「よく遊び,よく学べ」と伝えてきました(しんがりの先生が予定されていた言葉だったそうです.すみませんでした…).

 これだけですと「最近の動向」で一言報告すればよいかなと思ったのですが,少し書き加えたいことには,新入生に「よく遊び,よく学べ」と言ったものの,自分自身を振り返ったときに遊ぶのが非常に下手であったなと思いました.部活動・サークルも入らず(残念ながら雰囲気合わず)自宅と大学を往復する日々……教職課程の授業が7限(21:10?終了)にあったことが思い出のひとつになっているほどです.同級生に誘われて都心に出かけることはたまにありましたし(とてもありがたい機会でした),地元でボランティアなども楽しみましたが,もっと何か大きなこともできたのではないかと思うと勿体なかったかと少し悔いています.

 今さら大がかりな遊びはできそうにありませんが,もう少し「庭園めぐり」を進めてみたい,が新年度の抱負です.ちなみに,1年生の授業を担当することになっています.是非皆さんに大学生活の抱負を聞いてみたいですね,私自身の参考にするために.


3★ゆとりある流行り 2023.2

 

 必ずしもアカデミックなネタではないので,ここに書くのも少々憚られたのですが,ここ数年?この時期になると毎年同じようなことを思うのでいっそと思い,書き記します.

 昨今,小学校の卒業式では袴を着るのが流行りのようで,この時期の新聞の投書欄にはその内容が様々な切り口でコメントが載せられています.和服に親しむひとつの機会ではあるのだろうなと思いつつ,レンタル袴+着付けも要予約(自宅に袴があるわけでもなく,自宅で着付けるわけでもない)の時代に「袴着用」という”目標”がひとり歩きしていることには,寂しさを覚えることがあります.

 ところで,こういう時やはり自分自身の経験をつい考えてしまいます(正直微妙なことだとは思っています).20年以上前,特に深く考えることなく,私はお気に入りの水色のワンピースで卒業式に出席しました.が,私以外の同級生は皆一様にブレザー(おそらく中学のを着用していた人も).同級生のひとりから「服装違わない?」と言われてショックも受けました.その時初めて複雑な気持ちになりましたが,学校から事前に指定があったわけでもなく,偶々そういう潮流があったにすぎません(当時そこまで理解していたわけではありませんが).「別にいいじゃん」という気持ちで式を終えました.

 あの時悲しくならなかったのは,家族がそのことを大事にしなかったからかもしれません.「ひとり違ってしまったね」とは言われましたが,ただそれだけのことで,周りと違ってもそれは大したことではないのだと,自然に教えてもらったのではないかと.
 流行りは流行りとして,「そういう流行りもあるよね.けど…」くらいのゆとりある流行りの空気が流れていてほしいなと思います.服装に限らず,何につけても…


1★空から多摩NT 2023.1

 

 新年があけました.新しいことをやろう,と下手に意気込んでしまうとうまくいかないことが多い性格ですので,心穏やかに,これまで積み上げてきたことを引き継ぐように,あるがままなすがままに正月を過ごしています.一年前は(コロナではなくも)床に臥せていた年明けでしたから,それに比べれば,晴天の下,静かに布団を干せることすらありがたいと感じます.

 (一応の)初詣でひいたおみくじ曰く,なんと「凶」…とても久々にひきました.これはもういよいよ精進して尽くさねば,と思う中,ふと,とあるクラウドファンディングのページを見つけました.

 『航空斜め写真を撮影して街の姿を未来に残そう!』のプロジェクト名で,東京都多摩市と多摩ニュータウンの航空斜め写真を撮影する支援金を募る内容です(詳しくはこちら).事業は市の複合文化施設であるパルテノン多摩によるもので,パル多摩はこれまでも定点写真の撮影と写真集の印刷を行っています.写真集は私も授業でネタとして使いますし,他にも多摩NTのイベントごとではこの航空写真や定点写真の展示がよく行われており,いつも興味深く拝見しています(見知った場所の変化を知ると少し泣けます).

 垂直写真に比べて,斜め写真は,街の雰囲気や地形がよりわかりやすいため,個人的に見ごたえがあります.事業の成功と新たな写真集に期待です.

多摩センター駅のベネッセコーポレーション東京ビルで撮影. 多摩NTシンポジウム(4市長が集結)の会場でした      (2010年のことです,早いですね)
多摩センター駅のベネッセコーポレーション東京ビルで撮影. 多摩NTシンポジウム(4市長が集結)の会場でした      (2010年のことです,早いですね)

10★今,目の前にある世界 2023.12

 

 気がついたら,TVで2023年の振り返り番組が流れるような頃になっていました.個人的な今年の一大出来事はニューカレドニア再訪に他なりませんが,そういえば書いておきたかったことをまだ綴っていなかったな,と.(おそらく)今年最後の投稿です.

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 ニューカレドニア・グランドテール島の島内に電車はなく,バスに頼った移動になります.宇津川は左ハンドル運転は未経験ですし,バスからはひとりでも写真が楽に撮れますので,ほぼ毎日,Taneoバスに乗っていました(運賃は一律300CPF.日本円だと400円前後.適宜乗車券を買うシステムの他に,チャージできるICカードも導入されていました).

 バスは当然,島内の人にとっても大事な足ですので,乗車していると日常生活を営む(といってもバスで移動している)人々の姿も自然と目に入ります.その多くの人が窓の外を眺め(おそらく)いつもと同じ風景を目に映しています.「よいなぁ」と宇津川は何度思ったことか.それはなぜか.

 ***

 場所は変わって日本は東京にて.今年,何度も何度も苛立たせられたのは歩きスマホでした.電車に乗り降りするなら前を見てほしいな,とか.改札に向かう途中は前を見てほしいな,というか普通に歩いて前に進んでほしいな,とか,and so on...

 悔しさすら感じることもありました.偶然ですが,今年は通勤経路で白杖の人と遭遇する機会がこれまでになく多い一年でした.お声かけした際,サポートを求められたときには横に並んで歩いたり(ずっとは無理ですので,宇津川も無理のないところまで).その途中,何度も歩きスマホさんたちとぶつかりそうになったり,実際ぶつかることもしばしば.事前に注意しても耳にはイヤホンが.点字ブロックを利用?すらしている歩きスマホさんは,足元にあるそれを何だと思っているのだろう,と.

 また,東京に限らず,電車・バスの中で車窓を眺める人はかなり少なくなったのではないかと思っています.電車・バス移動に加えて徒歩中も,となった昨今.そういうものか,とも思いますが,個人的にはもったいないな,とも感じます.四季のある日本だからこそ,いよいよ.

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 ニューカレドニアのバス車内でもスマホさんを操作している地元の人はいました.ただ,基本的に本当に短時間です.眩しい青空と青い海という景観は(繰り返しですが)きっとあまり変わり映えはしないものかと.それでも,街や自然の変化に目を向けている(ように見える)光景はとても穏やかなものに感じられましたし,私自身の日常でもそうであったらと少し望んでしまうものでした.

 動画もゲームも否定しません.しかしふと周りを見渡すと,小さな画面に釘付けになっている人ばかり,という異様さには気がついてもらいたいとどうにも思ってしまいます.そこには”街や自然の変化を感じ取るだけの余裕”のなさが見て取れます.そして,人には人のペースがあり,歩きスマホさんが時として誰かの脅威となっていることは無視してはいけないことだと思うのです.

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 大学で「自然地理学」を担当する身としては,来年も授業の中で折に触れて「自然の機微を解する」きっかけを伝えていきたいです.

 来年も良い年でありますように.

Taneoバス. 大型もあれば,山地内集落向けの小回りのきく小型もあります
Taneoバス. 大型もあれば,山地内集落向けの小回りのきく小型もあります
車内はこのような感じです
車内はこのような感じです

8★とりあえずは見守ります 2023.8

 

 夏に入った頃から,夜,帰宅すると,玄関で時折ヤモリくんが出迎えてくれることが増えていました.自分が中に入ろうとドアを開けると,驚くほどのジャンプ力で一緒に中に入ってきたこともありました.我が家はペット禁止ですし(真剣),その時は「外におかえり」と出て行ってもらいました.

 しかしどうも中に入りたがるのですね.また三和土に入っていることに気がつきました(今度はいつの間にか).暑さで外壁も熱々なのでしょうか.”家守”ですし,以前(おそらく別の子ですが)図らずも傷つけてしまったこともあるので,そのお詫びも兼ねて暫くは家の中でも見守ることにしました.一応かわいらしさもあるので,まぁよいかなと.名前は,まだありません(真剣).


6★寒い夏 2023.7

 

 しばらく更新が滞りました.もったいないですね.

 あっという間に夏至を過ぎ,梅雨明け間近の街中はいよいよ”寒く”なってきました.個人的に,体調管理がひと際難しい時期です.

 エアコンが苦手です.子どもの頃は,それこそ暑すぎる野外から,一気に汗がひいていくエアコンのきいた室内に移動した瞬間を楽しんだものですが,今はその瞬間に心がヒヤッとします.気温差のある環境を行き来することで体調を崩している自覚をするようになってからは,夏でも長袖で外出するか,長袖を余分に持ち歩くようになりました.電車に乗るときに羽織ったり,大学構内でも講義中に羽織ったり(講義中は波に乗ってくると不要になりますが).野外調査時が一番心配になります.特に汗をかいてしまっていますので.

 体感温度は本当に個人差がありますので,公共の場の温度管理は本当に自分で何とかせなばなりません.とはいえ「さすがに冷えすぎじゃないかー」と叫びたくなるような喫茶店などもしばしば.暫くはご褒美ケーキもお預けとなりそうです.

 

添書:本章のタイトルがはじめ「寒い冬」になっていました.何を当たり前のことを,というツッコミは自らしておきました.

夏は多少汗をかいているくらいが好きで,断然,扇子派です. そういう意味では浴衣は本当によい夏の装いだなと思います  (川越氷川神社にて撮影)
夏は多少汗をかいているくらいが好きで,断然,扇子派です. そういう意味では浴衣は本当によい夏の装いだなと思います  (川越氷川神社にて撮影)

4★夢の庭 2023.3

 

 一気に暖かくなってきました.とてもありがたいです.

 道すがら,マスクを少しずらして沈丁花の香りを楽しんでいる人を見かけました.同じことをする人間ですので,とても共感でき,ふと嬉しくなりました.

 沈丁花,梅,梔子.この3種類は,いつか作りたいと夢見る庭に是非植えたいと計画しているのですが,はて相性はどうなのかとか諸々気になります(礫屋さんとしては庭石も厳選したいところです.あ,砂もか).花にふれる度に勉強心をくすぐられますが,庭よりも前に,室内のグリーンをきちんと育てられるようになってからだなと,水を替えながらいつも思う宇津川です.

夢の庭にはこういう感じの子もいてほしいですね
夢の庭にはこういう感じの子もいてほしいですね

2★「地学」の何が 2023.1

 

 「地学」という科目がまた”追いやられて”しまっていた…とショックを受けた宇津川の呟きです.
 母校が「理数研究校」になっていたことは知っていたのですが,ふとカリキュラムを見たところ「地学基礎」も選択の「地学」も組み込まれていませんでした.在学時は「理科総合B」の地学分野が1年時の必修でした.教育実習でも担当させてもらったのは良い思い出ですが,現在でも地学担当の先生が赴任されているかはわかりません.

 母校が新たな姿で奮闘している様子を知って嬉しく思いました.一方”日本の理科教育の現状”に憂いを覚えました.いつものことです.
 共通テスト(センター試験)で地学があまり選択されない科目であることは知っています.その正しい背景をきちんと理解できないのがもどかしいです.
  大学での受験科目となっていないから…それは何故?
  担当できる教員がいない/不足しているから…それは何故?
  ノーベル賞の分野にはないから…?
  何だか理科っぽくないから…?
 理科であるはずの「地学」の一体何が疎まれているのでしょうか.暗記するのではなく,日々の生活を送る上で理解しておくことが必要な理論や教養が豊富に含まれているのに…それこそ,住む場所を決めるとき,エネルギー資源を利用するとき,自然災害とかかわるとき,地球がかかえる問題を正しく理解するとき…
 細々とでも地学の授業を行えている高校現場があります.受験に使わなくてもよいので,教養として学ぶ機会のある”ゆとりある”教育の場がもっと当たり前になってほしいのです.そのために変わるべきは,大学と社会の意識…

 

添書:2023年もやはり新聞に「地学」の共通テスト問題は掲載されず…掲載された問題を知るだけでも,ひとつの大きなきっかけなのに.