徒然なるままに


★サイエンスカフェ@東京経済大学 2019.12

 

 非常勤先である東京経済大学で,12月20日(金),サイエンスカフェに講師として招かれました.専門の内容を,ということでしたので『砂の”声”を聞く』というタイトルで,卒論・修論・博論で得た知見の一部を話しました(※後日,某先生から「砂?礫じゃないの?」とつっこまれました.「砂」の方が「礫」よりゴロがよかったので…).サイエンス”カフェ”ですので,飲み物&お菓子をつまみながらの気軽な会です.20名ほどの学生さんに来ていただけて,よかったです.

 砂からどのような”声”を聞く=情報を得ることができるのか.砂がもっている要素から話を始め,まずは海岸砂丘の形成過程(卒論)について少々.次に「砂丘の砂はどうやってできる?」の疑問をもったことで,礫から砂の生産―運搬過程に関する研究(修論~博論)を始めたこと,そしてダムと河川・海浜環境についても考えていること(博論)を紹介しました.聞きなれない単語も多かったとは思いますが,いくつも質問を投げてもらえてありがたかったです(少し初心を思い出した気がします).

 ところで,このサイエンスカフェにお招きいただいた背景?として,授業を担当している「自然地理学」の受講生が一役買っていたことを,講演後に知りました.どうも,授業中の宇津川は”脱線”していろいろ話したがっているようだから,ならばその機会を,ということでゼミの先生(サイエンスカフェの企画側のおひとり)に話が行ったそうです.嬉しい機会でしたので,その学生さんにも感謝です.ですが,授業中の宇津川はそんなに脱線したがっているのでしょうか….来年の大きな課題です.


★水をたたえる新次郎池 2019.11

 

 非常勤先の東京経済大学(国分寺キャンパス)に「新次郎池」という水辺があることは以前(4月)に紹介しました.久しぶりに訪ねてみたところ,国分寺崖線からの豊富な湧水で池がいっぱいになっていました.池まで下りていく階段でも林の陰から「ざーっ」という音が聞こえていました(ちょうど写真にうつっているところの音ですね).池から流れ行く先は小川として整えられています(シャガの花が咲く頃がとても美しそうです).新次郎池には5か所から湧水が入り込む,とのことですが,導水されているところ以外からも池へ流れ込んでいました.台風19号直後であれば池は溢れていただろうと思いますので,それを見逃したのは自然地理を学ぶ身としては反省です.

 


★礫のかたちの調べ方 2019.10

 

 日本地質学会のコラムに『海岸礫は河川礫より円くて扁平である』が掲載されました(サイトはこちら).

 タイトルを敢えて解釈しますと,石(学術的には「礫(れき)」)を机を上に置いたとき,「海岸の石は河川の石と比べて(上から見ると)真円に近く(横から見ると)扁平である」となります.半世紀以上前からそう言われてはいるけれど,研究結果が少ないので調べてみたところ確かにそうだった,という内容です.

 礫のかたちに関する研究は150年ほど前からあります.数多の研究者が実際に海や川で礫の計測をしたり,オリジナルの装置をつくっては礫を転がして実験をして,それらの結果から様々な理論を打ち立ててきました.特にこの研究が流行ったのは,コラムでもとりあげられている文献を中心に1930~1950年代といえ,今日にも繋がる主要な理論はこの頃に確立されました(砂や礫のかたちに関する研究史は宇津川・白井(2016)にまとめています.詳しくはこちら).

 コラムに掲載された手法や結果は面白かったです.Image-J(医学や生物学での利活用が多い画像解析ソフト)による分析は,結構きれいに結果が得られるのだなと思いました.手軽に野外でサッと傾向を知ることができるという意味では「視覚」も重要なツールだと私は思っています(特に,教育分野等で).

 ひとつ書かせていただきます.視覚的に円磨度を調べるのに多用されているKrumbeinの印象図について.コラムでは「16~32mmの小礫用と明記してあり」となっていますが,出典元には「どのサイズでも適用可能」と書かれています(The roundness figures are suitable for particle of any size(以下略);Krumbein, 1941, 70).宇津川は顕微鏡を用いて砂粒子の円磨度にもKrumbeinの印象図を用いています.むしろ,粒子の大きさで気にすべき点として,円磨度は粒子の凸部に注目して測定しますが「どの大きさの凸部までを評価の対象とするか」を考える必要があると思っています(興味のある方は先出の論文をどうぞ…).

 

※本コラムの内容について日本地質学会に問い合わせたところ,以前このコラムで述べていた誤記が修正されましたので,それに合わせてコラムの文末の一部を削除しました(2019.11.26)

 

 


★イベントボランティアという趣味 2019.9

 

 やや唐突ながら,大学生時代は大学の部活やサークルには入らず,地元でイベントスタッフボランティアをするのが好きでした.舞台イベントの裏方(時には役者としても)やシンポジウムでの記録係などなど.中でも特に楽しんでいたのが,毎年この時期に行われる公民館

(ほか市民団体,企業など)主催のフェスティバルの手伝いです.会場準備や観客誘導ほか,カメラとトランシーバーを携えて右へ左へ(上にも下にも)駆けていました.院生になってからは(ほぼ)"ボランティア断ち”をしていましたが,初めてのお手伝いから早10年,やはりこういう活動が好きなようで,趣味として自覚でき,今年楽しんできました.1週間以上前からついていた雨マークは当日曇り&晴になり,終わりに少し降られましたが(個人的には)申し分ない2日間となりました.お世話になった懐かしい方々にも会えました.地元を離れて約1年半,いつの間にかご当地ソングやアイドル,ゆるキャラができていて…ビックリ.

 慌ただしい夏休みの良い締めくくりだったと自己満足をして2期を迎えています.


★トトロ巡検 2019.9

 

 海外出張から帰って2日後,授業資料がほしいと思い,狭山丘陵を気ままに巡検しました.公益財団法人トトロのふるさと基金が出しているお散歩マップを参考に,小手指付近から所沢まで,バスと徒歩で楽しみました.

 狭山丘陵をしっかり訪ねたのはおそらく学部1年生以来です.入学したばかりの4月末,担任の教授お二人と学生30名で「遠足」をしました.立川集合でモノレール&西武線で狭山まで来たことは覚えていましたが,きちんとしたルートは思い出せず…ただ,今回ふと「あ,ここ歩いたな」と理解した風景もあり,懐かしかったです.

 山口貯水池,柳瀬川の源流,お庭のトトロ,雑木林などを巡り,「狭山丘陵いきものふれあいの里センター」で丘陵の開発の歴史やナショナルトラスト運動について職員さんに教えていただきました.センターの近くには荒畑富士(富士講)があり,無事登頂できました(景色は残念ながら…).

 思いがけず程よい日帰り巡検コースができましたので,来年実施してみようかなと画策している宇津川です.


★岩手小旅行 2019.6

 

 自分でもよくやるな,と思いつつ,北海道から帰って翌々日に今度は岩手に行ってきました.妹たちとの旅行ですから気兼ねはしません(が,気が抜けたともいえます).

 梅雨の間にしてはよくもった天候でした.ただ,やはり曇りの小岩井農場は寂しかったです.「青空に岩手山!」の写真を撮りたいと思っていましたが,岩手山すら心の目で見る必要があり,リベンジを誓いました.徐々に雨脚が強くなり(私は頭痛も始まって)農場もそこそこにドライブに切り替わりました.いっそ田沢湖まで,とも思いましたが,手近な御所ダムを回ってつなぎ温泉でお湯を浴びて(いいお湯でした)盛岡に戻りました.

 旅行であれ調査であれ,怖いのは朝目が覚めた時だったりします.今回がそうでしたが,翌朝,声が出ませんでした.北の国から風邪を持ち帰ったようで… 程よく動くと良くなることが多いので(特に調査中),盛岡市内の散策を楽しみました.思いがけず出会えたのは「石割桜」でした(写真下).盛岡藩家老の屋敷にあった庭石(花崗岩)の割れ目で育ったエドヒガンが,長い年月を経て巨礫を真っ二つにしていました.満開の姿はどれほど見事だろうとしばらく眺めていました.些末なことですが,この「石割桜」,道路標識には「The Rock Splitting Cherry Tree」と書かれていました.Splitting(半割)の単語を街中で見る時があるとは思っていませんでしたのでちょっと嬉しかったです(注:礫が運搬過程で破砕される際のひとつの現象として,自分の論文で好んで使っている表現です).

 なお,午後は体温の上昇が自覚でき,さすがに限界でした(歩いたら悪化したみたいです).新幹線の時間までミラーボールの回りそうな個室で横になり,何とか無事に帰宅できました.旅行の企画や手配に加えて,姉の看病までしてくれた妹らにはとても感謝しています.


★梅,とれました 2019.6

 

 立正地理学会を無事に終えた翌日,実家に戻りました.実家のある団地では毎年夏前と秋頃に草取りイベントがあり,中庭などの共用部分を皆さんで草むしり&剪定します.要はその人手として駆り出されたわけです.が,電車とバスで乗り継ぎ乗り継ぎ,実家に着いた頃には終わりかけていました(私が遅れたわけではなく,「30分前行動」というものだと解釈しています).着替えて軍手まで装着して”終わる”のも少しマヌケなので,実家の庭の一画でたわわに実る梅を収穫しました(剪定もしつつ).
 梅の相手をする私の様子を見ていたご近所さんの今日の一言:

「桜伐る馬鹿、梅伐らぬ馬鹿」.剪定に弱い桜と剪定に強い梅を対比した言葉ですが,確かに梅は伐らないと伸びる一方です.幹や枝が堅くて大変ですが,ノコギリとハサミで頑張りました.梅の実は豊作.次に実家に戻ったころにはきっと美味な梅ジュースになっていると確信しています(母に感謝です).

 

後日談:大変おいしい梅ジュースになっていました.

おすそ分けいただいて,蒸し暑いこの頃,炭酸割を楽しんでいます.


★国分寺周辺の自然地理学 2019.4

 

 今年度から国分寺にある東京経済大学で非常勤講師を務めています(担当は「自然地理学」です).国分寺という街中にある大学で自然地理学を教えるのならば国分寺崖線は外せない!と思い,授業準備も兼ねて,年明けから何度か国分寺巡検をしていました(国分寺に所縁のある恩師にも案内していただきました).国分寺駅周辺をしっかり歩いて回ったのは高校3年のとき,(のちに入学することになる)首都大の地理学教室主催の巡検以来だったかもしれません.

 正直な感想は「こんなに湧水の見られる公園が多かったのか」です.その思いを伝えるべく,東経大の講義では第2回に「国分寺周辺の自然地理学」と題して,”坂道の多さ”に続けて”湧水の多さ”を紹介しました.大学周辺に自然の憩いの場があるのですから,ぜひ訪ねてほしいです(個人的に特におすすめなのは滄浪泉園です).

 自然地理学では様々なスケールで物事を見る力が必要になります.地球全体で考える話題の前に,身近な話題で少しでも興味を持ってもらえたらなと用意したつもりです.情報量が多くて大変な授業かもしれませんが,頑張ってほしいと思っています(授業を提供する私が言うのもなんですが).

 


★熊谷でサクラサク 2019.4

 立正大学熊谷キャンパスの桜が満開となりました.昨年,着任した2018年は4月にはもう桜が散っていて,少し寂しい思いをしたのですが,今年は日ごと見事な桜を楽しんでいます.

 入学式が行われた4月1日は,ほぼ満開でした.構内を流れる小川沿いのソメイヨシノの並木は熊谷キャンパスの撮影スポットとなっており,記念写真を撮る新入生の姿をよく見ました.

 4月第1週は少し冷え込んで花のもちが良いといわれていましたが,4月8日の授業開始日も確かにまだまだ枝には重そうな花がついていました.2年分の桜を眺められた心地です.

 着任2年目も頑張っていきます.


★「この小石を四万十川の河原に」 2019.2

 朝日新聞(2/9)夕刊に掲載されていた記事に目が留まりました.
 四万十市観光協会宛に差出人不明の小石と手紙が届いたそうです.手紙曰く,昨年の旅行時に持ち帰ってしまった小石を元の川に返してほしい,とのことで,職員の方が四万十川にそっと落としてあげた,という内容でした.

 3年半ほど前に巡検で訪ねた四万十川を思い出しながら,この小石は良い人に拾われていたのだな,と感じたのが正直なところです.私に拾われた礫たちといえば,元の川に返されることは(ほぼ)なく,私や学生たちに好奇の目を向けられ,研究室の片隅で泣いているのだろう,と容易に想像できます.

 真面目なことを書きますと,分析対象として採取した砂礫はコンテナボックスで保管しています.それ以外に,調査や巡検で出逢って”一目ぼれ”した礫たちがいますが,まだきちんと居場所を決めてあげられていません.このHPでも,いつか彼らを紹介できるページを設けられたらな,と秘かに思っています.

★立正大吹奏楽部定期演奏会 2019.12

 

 やや唐突ながら,熊谷キャンパスのほぼ中心,アカデミックキューブ(19号館)の前には結構広いオープンスペースがあります.11月の大学祭で屋台が並ぶ場所だったりします.12月中旬のある日,吹奏楽部がそこでマーチングの練習をしているのを見かけました.暖冬の合間のやや寒い日でしたが,足並み揃えて見事な動きだなぁと思い……近くにいた部員(邪魔はしていません)に声をかけてまんまと入場券を入手しました(無料です).

 そして年の瀬の30日,演奏会(会場:ウェスタ川越)を鑑賞してきました.ほぼ満員だったように思います(地元の小学生や有志の合唱団とコラボする企画もあったとはいえ).I部がマーチング,II部がポップス中心,III部がコンクールの課題曲・自由曲そして合唱団とのコラボでした.

 着任1年半の人間が言うのもおこがましいですが,学生のいつもと違う側面が垣間見られて嬉しかったです.それは吹奏楽部の部員もそうでしたし,II部でコラボしたダンスサークルメンバーにも.本当に,楽しそうに見えました.教員(しかも大学)である以上,一番の関わりは授業になりますが,学業のほかに頑張っている姿を知ることができるのは,ある種の特権だろうかとふと思いました.今年の良い〆のひとつとなりました.ありがとうございました.

河原で礫の”身体計測”をする宇津川

フィールドノートには「円磨度印象図」のコピーを

貼りつけています

河口で観察したまだ扁平ではない礫たち(北陸にて)

「海岸の礫」といっても,供給源(基本的に山)から海岸までの距離等によって

”すでにどれだけ丸く(円く)なっているか”は異なります.

海へ流れ入る河川の長さや勾配,礫の種類,海岸の環境(波の強さ)など

「かたち」を考えるための要素はたくさんあります.

時間はかかりますが,丹念に調べていけば

いつかもっとわかることがあると思っています.

  本文とは関係ありませんが,秋の兆しに嬉しくなった1枚です

    トトロの森1号地付近.木漏れ日を美しく思いました

     羊群原ではなく,リアル羊:小岩井農場にて

    石も桜も好きですが,今回は桜に軍配が上がりました

  東経大の中にも「新次郎池」という湧水スポットがあります
  (春前でちょっと枯れ気味…)

はじめてお持ち帰りしたチャート(桑名にて)

多数の”断層”を含み,間の泥岩層はホルンフェルス化しています