2021


★地理基礎巡検@羽村,とブラタモリ 2021.11

 

 野外実習のサブが続きましたが,11月第3週はメインで担当する学部1年生(今年度は2年生も参加可能)向けの「地理基礎巡検」を東京西部の羽村で実施しました.行程などの詳細は,学科のwebページで紹介する機会がありましたのでこちらをご覧ください.

 この巡検の直前,NHKのブラタモリで玉川上水が取り上げられました.コメントは多々ありますが,やはり地形の解説には納得し辛いものがありました.「玉川上水がどうやって河岸(河成)段丘を上がって武蔵野台地の上を流れるようになったか」という問いは,当時の測量技術や地形への理解の高さを伺えるとても面白いものだと思うのですが,番組中ではさながらケスタ地形の図で説明がなされており,図らずも番組を3度見返して確認をしてしまいました.

 ここに書くのもなんですが.(河成)段丘面は一見平坦に見えますが,形成したのは河川であり,段丘面を上下流方向に見てみると下流方向にやや傾斜しています.羽村を含めた武蔵野台地西縁には細かい段丘面が複数あり,その段丘面ごとに微妙に勾配が異なるため,どこかで段丘面同士が交わる地点がうまれます.玉川上水はそうした段丘面の接点に注目して多摩川から離れた内側(≒台地の高位面)に流していっている,と.施工当時の記録がないのが何とも残念です(地形の目をもった人がいたのではないかなと妄想).

 ここで「詳しくは『羽村市史資料編 自然』をご覧ください」と書くと宣伝だよなと思いながら,うまい〆の言葉が見つからなかったこともあり,最後にさりげなく書き添えてみます.


★フィールドワークII@宮古島 2021.11

 

 11月第1週は学部3年生の野外実習「フィールドワークII」に同行しました.行先は宮古島.人生初めての沖縄が贅沢にも離島となりました.実習直前にPCR検査を受けて陰性を確認し,羽田空港から宮古空港に直行しました(ちなみに,帰路も同じコースでしたので,結局沖縄本島に降り立つことはありませんでした).

 移動は基本的にレンタカーです.大小2台の車を借りて学生を分散して乗せ,S教授が運転するハイエースの後ろを,宇津川はひたすら運転してついていきました.1日目,学生の大半を回収したのは宮古空港ではなく伊良部島を挟んだ隣島にあるみやこ下地島空港ターミナルでした(元々はパイロット訓練用の空港.2019年3月に旅客ターミナルがオープン).昼食をはさんで,伊良部島の北西にある”佐和田の浜(右上写真)”では学生が特に興味をもっていた津波石とご対面.スケッチをしつつ(潮が満ちていく中で)津波石の計測を行いました.下地島に引き返し”通り池”と呼ばれる沈水ドリーネも観察しました.

 2日目は宮古島の南側を巡りました.航空自衛隊駐屯地に隣接する大嶽城址公園では島の植生分布と地形の関係や御嶽(うたき)について学びました.亜熱帯の植生に囲まれた宇津川はひとりはしゃいでいました(パパイヤが生っている様子を見たのは初めてでした).そして地下ダム施設や資料館に展示されていたボーリングコア試料を見学できたのはとても大きかったです.新城海岸付近では湧水も観察でき,地質と水の関係を楽しみました.東平安名崎の近くにある漁港では基盤の島尻層群を拝むことができました.
 3日目は宮古島の北側へ.エビや海ブドウの養殖場,マングローブ林を経由にして北端の西平安名崎へ(右下写真).沈水カルスト地形の見事さと琉球石灰岩の硬さを”体感”できました.せっかくということで雪塩の製塩所にも立ち寄りました.砂山ビーチの砂丘は再訪したいところとなりました.

 4日目は宮古市街を巡検した後,伊良部島のサバウツガーと呼ばれる井戸跡の近くまで赴き,下地島空港で解散となりました(そして宇津川は宮古空港へ…)

 体調が心配な中の実習ではありましたが,とにかく琉球石灰岩を様々なかたちで堪能でき,朝の散歩で島猫にも癒された良き4日間となりました.


★フィールドワークI@仙台 2021.10

 

 10月第2週,仙台での「フィールドワークI」の野外実習にサブとして同行しました.久々の新幹線!正直なところ,新幹線での移動が一番緊張しました…

 初日は八木山動物公園から青葉城址経由で市街を歩き,地形や地質,街の様子を学びました.広瀬川沿いの大露頭(広瀬川凝灰岩と向山層&大年寺層)は宇津川自身が初めて仙台を訪ねた際に大興奮した場所でしたので学生と再訪できたことに感慨深いものがありました.

 今回印象的だったのは2日目に訪ねた栗駒山麓ジオパークです.特に,2008年岩手・宮城内陸地震で発生した荒砥沢ダム上流部の地すべりは(右写真)上方から観察することができました.前日に熊が出没したため,爆竹を鳴らしながらの観察でした.

 3日目は名取川河口付近の閖上や荒浜の地域に赴き,3.11の津波について考える一日でした.遺構を訪ねたり,避難の丘を走ってみたり.当時小学生だったという学生たちは何を思ったでしょうか.

 巡検は本当に刺激が多いです.感染対策で気を遣ってばかりでしたが,それでも野外で見聞きができたことは,特に現2年生にはとても大切な経験だったと改めて思います.


田中啓爾記念地理学奨励賞を受賞しました 2021.10

 

 非常勤授業を担当する合間(ひとつ下のコラム),第75回立正地理学会研究発表大会が開催されました.これまで会場の受付等を担当するなど発表会場にいることが難しかったのですが,今回はZoomを用いたオンライン大会ということで,口頭発表1件と地理写真1件(右図)にエントリーしました.

 また,この度とてもありがたいことに,立正地理学振興会(学会とは別組織)から「田中啓爾記念地理学奨励賞」をいただくことになり,大会中に表彰式が執り行われました.受賞の対象となったのは2019年に堆積学研究に発表した論文です.思い入れのある論文であり,時間はかかりますが一生続けていきたいテーマですので,今回受賞というかたちで認められたことを本当に嬉しく思っています.引き続き精進いたします.


★都立大での実習と60周年,そして 2021.10

 

 後期始まって間もない日曜日に3週連続で,都立大にて「地理環境科学実習I」の授業を担当してきました.前期・夏季休暇と引き続いて恩師の代講です.実習Iは,学部2年生用の地形・地質分野の野外調査・実験・分析方法を学ぶ実習科目で,担当回ではクリノメーターや柱状図の書き方,粒度分析などを行いました.10数年の時を経て,後輩に指導をする機会に恵まれるのは本当に嬉しいものです.熱心な後輩たちの様子に大変刺激を受けました.授業直前に当時の野帳などを見返してみましたが,とても目も当てられませんでした苦笑

 さて,2021年は都立大地理学教室の還暦にあたる年で,実習Iの合間の土曜日にオンラインで記念行事が行われました.10年前(当時学部4年)の50周年では,裏方として式典もパーティも楽しみましたのでオンラインというかたちはやはり寂しいものがありました(致し方なしですが…).S教授による記念講演とZoomによるブレイクアウトルームでの懇談会(卒業年代別)という構成で,懇談会では同期ひとりと久々に話ができました(同窓会幹事としてもう少しアナウンスが必要だったかな…).

 あとひとつ.今年から,都立大(全体)同窓会の代議員と理事を務めることになりました.同窓会には在学時にお世話になった身ですので,在学生・卒業生に向けて何かできるならという気持ちです(本当に,何ができるだろう…).


★2021夏の思い出 2021.9

 

 夏季休暇期間が終わり,2期の授業が始まりました.学生の皆さんには1期末に「コロナ禍だけど,工夫して夏休みの思い出をつくるように」と呼びかけましたが,果たして自分自身はどうだったか…

 落ち着かない夏休みではありました.大きなウェイトを占めていたのは,8月下旬と9月中旬の非常勤での集中授業です.日々の気温の変化についていけないなど,どちらの授業も万全の体調とは(実は)言い難かったのですが,両大学とも体制を整えた上で,対面での実習を行うことができました.

 8月下旬は毎年恒例の某T大での地学実験です.北千住まで自家用車で通勤しました(荒川や隅田川も楽しめました).例年は相模原などで野外巡検も行うのですが,今年度は北千住周辺+キャンパス内でのひと工夫実習となりました.剥ぎ取り標本に触れてもらったり,キャンパス内の石材に目を光らせてもらったり,暑い荒川河川敷まで歩いてもらったり…

 9月中旬はサバティカルの恩師の代講で某D大での地学実験でした.相模原と城ヶ島での日帰り巡検と,深大寺での半日巡検,どちらも無事に終えました(城ヶ島で雨に降られたのは残念でした…)

 受講した皆さんには,”地球科学”の視点で物事を見る面白さを少しでも感じてもらいつつ,短期間ゆえの「大変だけど濃い授業だった」という感覚を学生時代の思い出のひとつにしてもらえれば嬉しく思います.


★地理基礎巡検@川越&館林 2021.6

 

 学部(主に)1年生を対象とした地理基礎巡検(日帰り巡検)は,今年度各期9コースずつ用意され,地理学科の教員が1or2コースを担当しています.宇津川の担当は2期ですし,1期は他の先生方のコースに同行させてもらいました.

 6/6(日)はS教授による川越巡検.雨もぱらつくやや蒸した天候でしたが,川越駅集合で新宿(あらじゅく)~仙波~新河岸川沿い~一番街を徒歩で回りながら,川越の地形や歴史,土地利用を学びました.武蔵野台地の北端だけあって,様々な坂を体感する一日ともなりました.学生は事前課題として地形断面図と等高段彩図を作成することになっていました(宇津川は市発行のハザードマップを持参).湧水の分布も辿りながら,学生は少しの比高が命運を分けることも自前の図とともに理解することができたのではと思います.ところで,川越もすっかり人通りが戻りましたね(レンタル着物もちらほら).

 6/19(土)は館林巡検.ご担当はA教授です.まだ大学院生だった頃,調査地の最寄駅:足利市駅まで東武伊勢崎線で通っていましたが,館林駅は「あと少し」と思える目安の駅でした.下車したことはありませんでしたが,この度初めて駅前の様子を知りました.巡検のテーマは小麦文化と街の歴史でした.ということで,まずは駅前の日清製粉ミュージアムへ.麦とは,製粉とは,というところから学べる楽しい博物館でした.正直なところ,麦の世界をなめていたといいますか,これ程奥深いとは思っていませんでした.食への関心が人より薄いこともあり「ライ麦や全粒粉のパンが好きだなぁ」くらいの認識でしたが,麦の特性や製粉の過程に触れて得るものが多々あった2時間弱でした.お昼のうどんも(天ぷらも)大変美味でした.いくつかの地図とともに歴史の小径を辿りましたが,どうにも雨がやんでくれずひどくなるばかりで早めに終えることになりました.天候の良いときに城沼周辺の"里沼"文化を学びに再訪したいと思っています.


 ★前期の半分を終えて 2021.6

 

 早くも6月を迎えました.授業も半分折り返したところです.
 今年度は母校(首都大:現都立大)で1コマ講義を非常勤で担当しています.13年前,私自身が学生だったときに受講していた科目です(しかも当時と同じ曜日と時限).目線の向きが反対になり,感慨深いものを感じながら南大沢に通っています.宣言下ではハイブリッド方式(対面withZoom)で講義を行なっていて,実のところなかなか油断のできない90分です(インターネットやマイクが授業中に不調なると大変).気を遣うこともいくつかありますが,別ページ(徒然…)にも書いたように,顔を合わせて話ができる機会があるのはありがたいな,と.授業中にちょっとした小ネタを話せるのも顔を見て受講生の反応がわかるからこそ.残り半分も楽しみたいです.

 ところで日本第四紀学会のニュースレター「第四紀通信」の表紙に桂川で冬に撮影した写真が掲載されました(こちら).胴長を着て川を遡った先で出逢った"自然のオブジェ"です.


★オンライン授業の取り組みを「地球環境研究」に報告 2021.6

 

 遅まきながらご報告を.

 昨年度,オンライン授業の展開は(オーバーな表現ですが)"未知"との戦いでした.その授業の取り組みのうち,コンピュータの基礎スキルを身につける実習科目について,立正大学地球環境科学部の紀要「地球環境研究」に短報としてまとめました.

 

宇津川喬子・横山貴史・金延景 2021.Office365を用いた実習授業の実践とオンラインSAの導入―「情報処理の基礎」の事例―. 地球環境研究 23: 105-114(PDFはこちら

 

 核となるツールはMicrosoft Teamsです.Microsoft社が提供する複数のアプリケーションをTeams上で紐づけることができ,また,課題の提出/回収とフィードバックに長けていることから,今年度,対面授業でも用いています.Teamsは世界的に利用者数が急増したこともあって機能が目まぐるしく更新(向上)しています.使えるところは模索しながらうまく活かしていきつつ,あくまでツールとしてお付き合いしていきたいソフトウェアのひとつです.


★新年度,スタートしました 2021.4

 

 いつもと同じようで,けれどどこか違う新年度が始まりました.

 在学生ガイダンスは3月最終週から.新入生も4月1日にお迎えしました.桜が程々に残っていたのはよかったかなと思います.

 対面授業をメインに実施する地球環境科学部では,多々準備が進んでいます.そういう点では,コロナ禍前よりも断然慌ただしくまた忙しく,”緊張”もいっそうです.
 着任して4年目の春となりました.やりたいこと,挑戦してみたいこと,諦めざるをえないこと,少し距離をおくこと,どうやら種々頭を巡っているようです.新年度対応から落ち着く間もなく授業が始まりますが,早く落ち着いた思考の時間を楽しみたいなと思う宇津川です(大学図書館もようやく制限から開放されることですし…).


★巣立っていった皆さんへ 2021.3

 

 例年,立正大学は大宮にあるホールで卒業式を行っています.昨年度は多分に漏れず中止となりましたが,今年度は何とかギリギリ緊急事態宣言も明けた日に熊谷キャンパスで卒業式を挙行することができました.学科ごとに広い教室があてがわれ,(感染防止対策と)時間制限のある中,今年度ようやく顔を合わせることができた面々と別れを惜しみました.

 今回卒業した学年は宇津川が着任したときには2年生で,宇津川にとって立正大の”先輩”でした(大学の小ネタを教えてもらいました).宇津川はゼミを担当しませんので,授業を通して関われた学生の数も,彼らと過ごした時間も本当にごく僅かです.それでも,式の前後に授業で担当した学生数名が挨拶に来てくれました.嬉しくも寂しさもありました.教育に携われることはまだ限られていますが,教員として学生を送り出せる側であることがありがたいと感じました.

 巣立っていった皆さん,どうか元気で.


★ニューカレドニアを見せつける 2021.2

 

 慌ただしく1月が過ぎ,大学の暦上で春休みに入ってひと心地ついています(暇なわけでは決してないのですが).

 さて,今回やたら強気なタイトルをつけましたがなんてことはなく,日本堆積学会の学会誌:堆積学研究の79巻1号に表紙の写真を提供し,「カバーストーリー」という写真つきコラムを書いたので,ここのページを更新するネタとして書いておきます.

 2019年9月に訪ねたニューカレドニア・ウベア島の写真を選りすぐったつもりです.表紙(右写真)は本島(グランドテール島)からウベア島まで飛ぶ国内線から撮影したウベア島のラグーンです.お気に入りの一枚でもあります.カバーストーリーには,環礁であるウベア島の様子や,パウダーサンドの風紋,沈水ドリーネなどの写真と紹介文をまとめました.訪ねたのがもう1年半前というのが驚きです.

 再訪を誓うものの,具体的に日程を調整できないところがもどかしいものです.今は室内で彼の地の情報収集を楽しんでいます.


★大人しくしています 2021.1

 

 帰省もせず,比較的大人しい年明けを迎えました.新しい調査の計画も思うように立てられずにもどかしく思う中,ふとHPの更新が未完であったことに気がつきました(2020年最後の「動向」を更新しました).せっかく新年を迎えたのですから,エンジンを再始動して頑張りたいところです.2021年はまだ何かと制限がかかったままでしょうが,割り切っていこうと思います(年齢も偶数になることだし…関係ないか)

 多くの人にとって少しでも心穏やかな時間が増えることを祈ってやみません.

お決まりのまいまいず井戸からスタート

(人数が多かったら面白そう…)

佐和田の浜にて.下地島空港から離陸する準備はできている模様.

西平安名崎にて.遠くに来間大橋を望む.

地すべり地形と荒砥沢ダム(奥)

在学時,ふとしたときにいつも眺めていた風景です.

雲がなければ富士山も見えます.

モミジバフウが色づく11月初旬は特に好きでした(2015年11月撮影)

某T大で使われている石材でも特におススメの片麻岩

(バルコニーでテーブルとなっています.家に欲しい)

城ヶ島にてクリノメーター実習中(このあと本降りに)

浅間神社を"登る".山開きのお菓子は是非いつか食したい

ミュージアム内の庭にて.メノウの石臼が池に設えられているという
(近くに寄って観察できないのが残念)

カラー版.概要は左記のリンクからどうぞ

自然計測実習でも用いています.

受講者の登録をしておけば一斉に連絡ができるため,掲示板としても便利です

(添付ファイルも簡単に配布できます)

グラウンド横の枝垂れ桜は,まだ若く健気な雰囲気です

卒業式には何とかキャンパス内の桜が間に合いました.

こちらは同じく構内の白木蓮.卒業式の日には既に去っていましたが

大振りの花弁は確かに”翼”にも見えますか.

いつかの冬に撮影した房総半島からの夜明け