2024


3☆新年度,始まりました 2024.4

 

 2024年度が幕をあけました.昨年度末は,本務先でも母校でも,それぞれお世話になった先生がご退職され,寂しさ募る3月でした(実のところ2年間連続でのお別れ続きで,両学科にとっての節目の頃に立ち会っているようです).約10年間携わった市史編さん事業も終えて,自分自身にとって仕事の節目もありました.今年はいよいよ早く咲くぞ,と言われ続けたサクラも結局4月まで耐え,菜種梅雨を境に一気にほころび始めました.

 法政大3年目となりました.4/1に新入生と顔をあわせる機会があり,激励になるかはわかりませんが「これだけは他の人に負けないものを見つけてほしい.それが大学」と声をかけました.私自身も,興味の尽きない礫&砂たちの声をより聞けるように,自分磨きを頑張ります.

なかなか行けずにいた靖国神社の標本桜.ようやくご挨拶できました.蕾が多いのもよいものですね.
なかなか行けずにいた靖国神社の標本桜.ようやくご挨拶できました.蕾が多いのもよいものですね.

1☆鹿島・行方調査 2024.1

 

 新年最初の調査地は南茨城でした.学生・院生時代の巡検は勿論,学会の巡検,その他諸々で比較的よく訪ねる場所ですが,多少間をあけることで「同じ地層でも見方が変わるなぁ」とよく感じる地域でもあります.
 この地域でよく露出するのは下総層群という地層グループです.今回は(以前にもお世話になりましたが)下総層群に詳しい方にご一緒いただいての共同調査でした.堆積構造も美しい下総層群ですが,ここでも宇津川はやはり「礫の声が聴きたい」とサンプリングにも励みました.果たしてどのような声が聴けるのか,冬休みの課題です.

玉造虹の塔から遠くに望める行方台地
玉造虹の塔から遠くに望める行方台地

新阿蘇大橋と数鹿流崩れ(右奥).橋下を流れる黒川が濁っているのは,すぐ先で合流する白川に設けられた立野ダムの試験湛水のため. この景色を常態化させないための流水型ダムです.
新阿蘇大橋と数鹿流崩れ(右奥).橋下を流れる黒川が濁っているのは,すぐ先で合流する白川に設けられた立野ダムの試験湛水のため. この景色を常態化させないための流水型ダムです.
噴煙の上がる中岳(阿蘇山).噴火警戒レベル2ですので,火口には近寄れません(2024年2月2日時点).
噴煙の上がる中岳(阿蘇山).噴火警戒レベル2ですので,火口には近寄れません(2024年2月2日時点).

4☆日本堆積学会熊本大会+α 2024.4

 

 この一年で3度目の熊本入りです(熊本にかなり愛着が湧いています).今回は熊本大学での学会出席出張でした.行事委員ということもあって,前日午後から会場入りしてオンライン配信(ハイブリッド式を試験導入)の準備にあたりました.当日も,ノートPCのべ4台に囲まれながら,イヤホンでオンライン配信の音声を確認しつつ,発表者のスライドも適宜切り替えたり(間に自分の発表もこなしたり).初日にブルーライト眼鏡をかけ忘れたので頭痛にも悩まされましたし,多々事前に工夫はしつつも当日のアクシデントはつきもので手間取ることも少なからずありました.それでも,オンライン対応へのやりがいと手応えは確かに感じられ,新しい学会スタイルのよいテストケースになったと思えました.

 学会後は島原にわたり,雲仙普賢岳周辺や有明海沿岸,筑後川下流域を巡りました.特に低地の地形をじっくり巡る機会はなかなかありませんので地形図も広げて楽しみつつ,大変勉強になりました.適宜これからの授業にも取り入れていきたいと思います.

 

余談:がまだすドームや土石流被災家屋保存公園は高校の修学旅行コースでした.長崎での「平和学習」も覚えていますが,この「自然災害学習」も印象(衝撃)が強く,元々高かった地学への関心にも大きく影響したようにふと思い返しました.

熊本大学黒髪北地区にて.小泉八雲レリーフは結晶片岩に,演説の一部が掘られた碑は(写真外ですが)安山岩でした.夏目漱石先生にご挨拶できなかったのが無念…
熊本大学黒髪北地区にて.小泉八雲レリーフは結晶片岩に,演説の一部が掘られた碑は(写真外ですが)安山岩でした.夏目漱石先生にご挨拶できなかったのが無念…
東よか干潟の澪筋に集まる鳥たち.設置されていた望遠鏡(無料!)越しに撮影しました.ムツゴロウやトビハゼの躍動も動画にバッチリ収められて満足です.
東よか干潟の澪筋に集まる鳥たち.設置されていた望遠鏡(無料!)越しに撮影しました.ムツゴロウやトビハゼの躍動も動画にバッチリ収められて満足です.

2☆冬スク「現地研究」@熊本・島原 2024.2

 ←書きすぎたので,写真はこちら

 通信教育部の冬期スクーリング「現地研究」を2月頭に熊本・島原で行いました.初日はあいにくの雨でした.これを予想していたわけではないのですが,熊本駅前のアミュプラザを集合場所にしておいて正解だったと思いました(広い屋根に感謝です).おかげで総勢20名の学生さんとの3日間を無難にスタートできました.
 下見時の投稿(こちらの★17)にも書きましたが,今回の授業では”火・風・土・水”をテーマに自然災害と人間生活を巡ることにしました.初日はまず熊本城で「2016年熊本地震」の復興の様子を見学.二の丸公園を抜けて藤崎台のクスノキ群にご挨拶しながら,城やクスノキを支える地形・地質的背景(Aso-4火砕流台地)も学びました.後半は市電で水前寺公園を通過し,江津湖へ.豊富な地下水と生態系(スイゼンジノリと近年の外来種問題)について考えました.終了予定時刻を1時間超過してしまったこともあり,皆さんにはやきもきさせたと思います.要反省です.
 2日目は中型バスを貸し切って阿蘇へ向かいました.その途中,やはり見ておかねばと堂園地区に保存されている布田川断層帯に立ち寄りました.2016年熊本地震で横ずれた土地をそのまま見ることができる,本当にありがたい場所です.展望台ヨ・ミュールでは阿蘇の外輪山の切れ目から吹き降ろすまつぼり風を紹介.新阿蘇大橋下に望む立野溶岩の柱状節理を双眼鏡で覗いたりもしました.震災ミュージアムKIOKUでは当時被災された方がガイドを務めて下さり,しばし交流の場ともなりました.草千里が浜でお昼休憩.まさか巡検の前週に中岳の噴火警戒レベルが上がるとは思っていませんでした(ルートから外すかどうか,少し悩みました).短いながらも自由行動の時間をとり,阿蘇火山博物館を訪ねた人もいれば,草千里の散歩を楽しむ人も.しかし,本当に海外からのお客様の多いこと(平日だからかもしれませんが,日本語があまり聞こえません).2日目後半,これもやはり見ておかねばと,数鹿流崩れを背に阿蘇大橋を目に焼き付けました.また,今最も熱いダムスポットともいえる立野ダム(稼働前)で”水が溜まっている”珍しい姿を捉えつつ,これまでのダムとこれからのダムとの付き合い方について考える時間をとりました.

 最終日は熊本港から島原へフェリーで渡りました.地勢図を広げながら周囲の地形を把握しつつ(+カモメと戯れつつ)小1時間の船旅をまずは楽しみました.今回船旅をしてまで島原に渡りたいと考えたのは,1792年に発生した「島原大変肥後迷惑」と呼ばれる眉山の山体崩壊とそれに伴う津波災害のスケールを実感してもらいたかったからです.眉山の山体崩壊は前年から起きていた雲仙岳での火山性地震に起因するとされており,火山・地震・山体崩壊・津波とまさに複合した自然災害です.フェリーの航路はほぼ西⇔東をとっているため(速度こそ異なりますが)それ程長くない距離を津波が往復したのだと島原湾で実感してもらえればと行程に入れました.島原ではバスで雲仙岳災害記念館に向かい,短時間ながら濃い見学をしました(バスが記念館前で停まるルートになっていたら,もう少し落ち着いて見られたのに……と思います).船乗りくまモンの大きなぬいぐるみと共にフェリーに揺られて熊本港へ戻り,(少々スムーズさに欠けましたが)無事に熊本駅で解散,となりました.

 やや詰め込んでしまった3日間で,解散までなかなか気の抜けない行程でした.その辺りはまだ要修行だなと思います(熊本空港の出発ロビーの快適さに今回も助けられました).