2019


★山梨・勝沼ワイナリー調査(のお手伝い) 2019.11

 

 立正大学地球環境科学部では,文部科学省大学教育再生加速プログラム(AP)活動の支援のもと,「学生研究プロジェクト」と称して,学生主体のフィールドワーク実習への研究助成を行っています.今年度,地理学科の2年生3名による「山梨県甲州市勝沼におけるブドウ園とワイナリーの関係性」の研究テーマも採択され,私はフィールドワークの運転手として8月,10月,11月に同行しました.学生たちは授業にアルバイトと忙しいので,夕方に熊谷を出て夜に甲州入り,翌日朝から調査という行程でした.学生主体の研究ですので,ルートも調査手順も温かく見守って,必要最低限のコメントと何より安全運転に努めました.山梨・甲州をしっかり訪ねたのは,家族旅行でそれこそブドウ狩りに行った以来だったように思います

 どの回でも,学生たちがしっかり動いてワイナリーやブドウ畑で見学+農家さんへの聞き取りを行っていました.宇津川は白ワイン派なのですが,方々で試飲する成人学生を横目に,ぶどうジュースをじっくり味わっていました(もちろん美味でした).

 10月調査では,台風19号で中央道が通行止めとなったため,御殿場~東富士五湖道路経由で甲州入りしました.ぶどう寺で知られる大善寺に到着したのは深夜.翌日にはまた同じコースで帰路につき…頑張った宇津川です.

 10月にしっかり見られなかった台風の影響は,11月調査で知ることができました.あわやブドウが…というところにも畑やワイナリーがあることに驚きつつ,頑張っている学生たちから離れ,宇津川はひとり,日川(右写真)と地質図と地形図を眺めていました.甲州市の扇状地は後背地の地質が微妙に違うのですが,それはブドウの栽培に何か影響するのだろうか…など(不勉強なのでまだわかりません,が「地質学からみたワイン」に関する雑誌を買ってしまいました).

 最後にお世話になったお礼も兼ねて宣伝を.甲州市立勝沼図書館のワインの蔵書量は本当に素晴らしかったです.ご興味のある方はぜひ.


★海外フィールドワーク@ニューカレドニア 2019.9

 

 イベント第2弾は,9月上旬の10日間ニューカレドニア巡検でした.ニューカレドニアといえば,日本では特に超リゾート地(と昨年知りました).人生初の南半球体験は,思いがけない南の島となりました.「海外調査法およびフィールドワーク」という授業になりますが,1年かけて,主担当教員の提案する海外の地域を舞台に,事前学習・巡検・事後学習に取り組みます.私の引率を知った先生方からは異口同音に「ニューカレドニア,いいね」のコメントをいただきましたが,実のところ15名の学生との渡航には緊張していました.無事に全員帰ってこられて本当によかった…

 季節はちょうど冬の終わり.春の兆しが見える頃です.とはいえ,南緯20~22度に位置する南国ですので,昼間は快適ですが朝晩はちょっと寒かったです.紫外線は日本の3~5倍とのこと.サングラスは外せませんでした.海も空も夕焼けも(街の雰囲気も)とても眩しかったのです.

 ニューカレドニアはフランスパン型の本島(グランドテール島)とロイヤリティ諸島で構成されています.フランス領になりますので,公用語はフランス語(街なかでも英語は通じないお店がありました)と原住民(メラネシア系)の言語ですが,飛行場をはじめ日本語が多々見られたのはさすが「リゾート」でした.フランス語の簡単な挨拶と曜日の表記は覚えておいてよかったです,いろいろ役に立ちました.

 サンゴ起源の白い砂浜(けれど海岸侵食の傾向あり),穏やかなラグーン,ただただ澄んだ碧い海,砂泥互層の離れ岩,マングローブ,ココナッツの林,ニッケルの赤…….ふと思い出すととにかくカラフルなところでした.時間をみつけて,別ページを用意できればと思っています.

 巡検の報告は下記サイトをぜひご覧ください.

★立正大地理学科HP内★

 海外調査法およびフィールドワーク2:現地報告

 

 


★国際第四紀学会(INQUA)@ダブリン 2019.7

 

 今夏の大きなイベント第1弾は,7月最終週にアイルライド・ダブリンで開催された国際第四紀学会でした.ポスター発表※でもセカンド,という身分で出席しましたので恐縮しつつ,1年ぶりの国際学会を楽しみました(稚拙ながらも,外国語でコミュニケーションをとることが好きな性格のようです).

 ダブリンはリフィ―川の河口付近に広がっています.学会会場(コンベンションセンター)はリフィー川の目の前にありましたので,毎朝運河や川べりを散策しながら会場に向かっていました.市街はとにかくカモメだらけでした(そのカモメたちがちょっと狂暴で…).

 学会の中日(巡検日)は,恩師を誘ってダブリン郊外にあるグレンダーロッホ(Glendalough)に足を伸ばしました.ゲール語(ケルト語の一種)で「ふたつの湖の谷」という意味をもつグレンダーロッホには,確かに大小の湖が東西に並んでいます.氷河によって削られた跡に広がる湖で,見事なU字谷も発達しています.少し文献を調べてみたところ,もともとはひとつだった湖の真ん中に川が流れ,その川が「氷河が削った礫」を運びこんだことで,2つの湖(アッパーレイクとロウワーレイク)に分けられた,と考えられているようです.写真を撮った尾根道まではなかなかの勾配で暑くなり,尾根に上がると今度は冷たい風が強くて大変でしたが,来てよかったと心から思える絶景を眺めることができました.いつか(U字谷の中を抜ける)一番長い散策ルートを巡ることができたらと思います.

 ところで,アイルランドは(やはり)紅茶が大変おいしいところでした.特に,学会の休憩時間にはおいしいクッキーとおいしい紅茶をいただきました(紅茶の種類も12種類くらいありました).せっかくだからとスーパーで紅茶を購入し,居室で楽しんでいます(けど,水が違うからかちょっと味が違う…)

 日本から出国した頃はまだ梅雨寒でしたが,羽田空港に降り立つと灼熱の文字がよく似合いそうな天候になっていました.日本の夏,さすがです.


★札幌・三笠・小樽フィールドワーク 2019.6

 

 学部3年生を対象としたフィールドワーク(FW)にサブ教員として同行しました.6月最終週は梅雨ど真ん中ですが,北海道は数少ない例外といえるかと思います.昨年度は稀にみる雨天続きでしたが,今回は3泊4日全日晴天の下で実施されました(油断して焼けました…)

 本FWのテーマは「北海道都市の発達と現状」です.初日は午後のみ.札幌の中心部を徒歩と地下鉄で巡りました.大通公園が官公庁と商業施設の境となっている土地利用を観察したり,2日目・3日目に繋がる要素として北海道神社(内の北海道鉱霊神社が重要)を参拝したり…etc. 観光名所である時計台や赤レンガ庁舎も大事な巡検場所として訪ねました.夜にはミーティングがあり,予習・復習が行われます.気温もそこそこ高くて,思えば初日から体力は使っていましたね.

 2日目はバスで三笠へ.夕張炭鉱と並ぶ三笠炭鉱の跡地は,現在三笠ジオパークとして地域振興の一拠点となっています.炭鉱跡ならではの史跡も多く,幾春別川沿いには石炭の露頭も見られる貴重な場所です.他にも見所が多く,いつかゆっくり探索出来たらと思うところです.ちなみに宇津川がサブ教員としてFWに同行するきっかけとなったのがこの石炭で,学生の前で(予習した内容を)解説する務めは果たしました.夕方には篠津で泥炭(石炭の”原料”)にも触れてもらいました.北海道の大地は面白いです.

 3日目は再びバスで石炭の積出港として栄えた小樽へ.有名な小樽運河がかつてふ頭の増設によって衰退し,道路埋め立ての危機にあったことは初めて知りました.小樽では巡検だけでなく,観光客への聞き取り調査の実習も行われました.学生に混ざってやってみたかったな,と思いつつ,ガラス細工やオルゴールに感嘆する時間も過ごしました.小樽は急斜面にも街が発展しています.今回はあまり巡ることができませんでしたのでいずれまた.

 最終日は再び札幌です.ランドマーク調査の実習を班ごとに行っている間,豊平川サケ科学館を訪ねました.札幌は豊平川扇状地の扇端に広がる街ですが,科学館はちょうど扇頂部に位置しています.サケは水槽越しに観察しただけですが,地形的にもおいしい時間でした.

 「地形から見る街の発展」は予てから興味がありましたが,人文的な見識をもっと深めたいなと思いました.いろいろな刺激が強かったのか,それなりに気力&体力を使った4日間でした.


★JpGU&立正地理学会 2019.5-6

 

 5月末は日本地球惑星連合大会(JpGU)に出席しました.これまでは「地形」や「堆積」のセッションに参加することが多かったのですが,今回は初めて「第四紀」のセッションで口頭発表を行いました.羽村市史編さん事業の調査で得た青梅層の堆積学的特徴の報告が主体です.『羽村市史』も少しアピールしてきました.JpGUはさすがに大会の規模が大きいので,懐かしいお顔に沢山出会えます.今年は立正大の学生にも遭遇しました.今回は「教育検討委員会」にも初めて出席(聴講)してみました.地震活動も火山活動も活発な日本にとって「地学」は極めて必要な教養であり,私は”地学教育の充実”を喫緊の課題だと思っています.ここで書き始めてしまうと収拾がつかなくなりそうですので,機会を見てまとめることにします.

 6月初日は立正地理学会の研究発表大会でした.私は受付にて笑顔で応対しつつ,裏方をサポートしていました.発表,というわけではありませんが,昨年同様「地図写真」を貼りました.参加者の何名かとダム環境についてお話ができたのは楽しかったですね.居室の前に貼り直しましたが,せっかくなのでこちらにも載せておこうと思います.

 


★秩父巡検 2019.5

 

 学部2年生以上を対象とした「自然計測実習」という授業を担当しています.自然地理学の実習版ということで,野外調査の基礎を学びます.
 12日(日)には,実践編として秩父に日帰り巡検に行ってきました.前日が暑いくらいの好天でしたので心配でしたが,当日は風爽やかに1日過ごすことができました.
 朝は橋立鍾乳洞から.昨年度も同様の巡検を行いましたが,鍾乳洞に入るのは今回が初めてでした.受付で「荷物は置いていったほうがよい」と声をかけられた理由がよくわかる狭さで,大変そうな学生さんもいました(置いてこなかった).秩父の街を支えた石灰岩がなぜこんな山の中に?という話から始まり,プレートテクトニクスの復習になったかと思います.
 御花畑駅から西武秩父駅へ歩く途中では,荒川の河成段丘を体感してもらいました.尾田蒔丘陵(荒川左岸)上に広がるミューズパークまではバスで向かいます.もちろん,地形図でルートを追いながら,です.街中の段丘も確認しながらミューズパークの展望台で高位・中位・低位の段丘を認識しました.夜景は見に来たことがある,という学生さんに写真を見せてもらいましたが,夜もなかなかの絶景でした(展望台に行くまでが大変そうですが).
 歩いて丘陵を下り,秩父名物の大橋を越えて秩父駅へ.長瀞駅では自主巡検サークルの学生さんと待ち合わせて岩畳を巡りました.付加体と三波川帯の話は少し専門性が高かったかもしれません.たまにはまぁいいかなと思いながら話しました.長瀞でのポットホールとソフトクリームは外せません.
 17000歩歩きましたので,さすがに疲れたかなと思いますが,ぜひ自分自身でも外に出て地理学科の学生らしく見分を広めてほしいと思います.

 

 


★日本堆積学会大阪大会 2019.4

 

 日本堆積学会2019年大会に行ってきました.例年,大学が会場となることが多いのですが,今回は大阪市立自然史博物館で行われました
 せっかくなので,大会のプレイベントのうち「博物館バックヤードツアー」に参加しました(”舞台裏”という空間が好きです).
化石だらけの「一般収蔵庫」や植物・昆虫標本などの「特別収蔵庫」をはじめ,特別展示準備中の展示室や学芸員研究室,書庫など幅広く見学させていただきました.学生時代に某S市立博物館でアルバイトをしていたこともあり,少し懐かしいものを感じました(香り,とか).「人手不足(化石クリーニングのできる人材募集中)」と「保管場所不足(せっかく寄贈されても置き場がない)」が課題と伺い,今回のツアーではその様子が垣間見えました.例えば,積まれたままの箱・箱・箱など.こうした現状は,アルバイト先の博物館でも聞いたことがありました.博物館や資料館は地域の教育機関の場であってほしいと日頃思っていることもあり,改めてもどかしいものを感じました.
 大会の方では個人講演2日目の朝イチに発表を行いました.いつもは「礫だ」「円磨度だ」が多いのですが,今回は『小・中学校のための堆積学的教材データベースとネットワークの構築』という題目で地学教育に関わりたいという意思表明をしてきました.まだ構想段階ですが,多々コメントをいただけたのはやはりとてもありがたかったです.

 ところで,大阪市立自然史博物館もある長居公園,予想以上に広大で,多様な楽しみ方ができるところでした.特に植物園は季節もよく,見ごろを迎えた花々を見にきた多くの人で賑わっていました.私は「歴史の森」を学生と回ってみたいな,とも思いながら,学会の合間に散策を楽しんでいました.いつか,またぜひ.
 

 


★天竜川調査 2019.3

 

 博士論文でもお世話になった天竜川を訪ねました.ちょうど桃が満開を迎えた頃ということもあって,道の駅花桃の里はお花見を楽しむ方で賑わっていました.

 天竜川のダムといえば佐久間ダムが有名ですが,その下流側には秋葉ダムと船明(ふなぎら)ダムがあります.その二つのダムの間に注ぐ天竜川の支流・気田川で砂礫調査を行いました.気田川は四万十帯を流れているために砂岩や頁岩が多く,基本的に黒い河原です.一方(今回は行っていませんが)佐久間ダムと秋葉ダムの間に注ぐ支流・水窪(みさくぼ)川は,三波川帯を流れていることから結晶片岩が多く,河原は緑色が目立ちます.佐久間ダムより上流には領家帯の花崗岩(白っぽい)が多いことから,浜松平野を流れる天竜川の河原は本当に色とりどりです.支流と本流で地質帯が異なるためにこうした面白いことが起きるわけですが,こうした面白味を学生たちにうまく伝えられるようになりたいと改めて思いました.

 勿論,ここでの研究成果も何とかまとめられるように,精進です.


★谷津干潟の海藻観察会に行ってきました 2019.2

 

 東京湾に残る数少ない干潟・谷津干潟に足を運びました.JR津田沼駅からバスで10分さらに徒歩5分ほどで,街なかとは思えない光景が広がっていました.干潟との縁はあまりなく,2015年の巡検で訪ねた豊川河口(豊橋市)はかなり砂質な干潟でしたので,貴重な経験となりました.
 今回は谷津干潟自然観察センターで開催された海藻観察会に出席しました(講師は千葉県立中央博物館のノリ博士でした).簡単な海藻の講習を受けた後,胴長(このために持参しました)を着用していざ干潟へ.私は礫&砂の研究者で,確かに泥の経験はまだまだですが,干潟のなかを進むのは大変難儀しました.転ばないように移動するのは神経をつかいましたが,泥の中を歩む楽しさが勝っていました.ヨシ原のまわりで海藻を探したり(水鳥の死骸も目につきました),澪筋(干潟の中の”川”)をこえたり,貝殻の上をぱりぱり音をさせながら歩いたり.とても新鮮でした.
 さて,そもそも谷津干潟を訪ねたのは,干潟の様子や調査方法を「自然計測実習」という授業の教材(画像や映像)として収集するためだったのですが,干潟の中では安心してカメラを構えることが難しく,正直無念!でした(水中カメラも持って行ったのですが…).数少ない教材を公開できるよう,これから授業準備です.

 別の調査時に撮影した「扇状地の上の果樹園」.綺麗です.

台風19号で一新された日川の河原.花崗岩の巨礫がゴロゴロ.

  濡れることも厭わずに飛び込みたいと思った海なんて

  生まれてはじめてでした(ウベア島にて)

   本島の西海岸ブーライユ近郊にあるロッシュペルセ

  (孤立した岩の名前は「だるまさん」

   転ばずにそのまま残っていてほしいと思うけれど…)

  アイルランドを象徴するハープを模した橋とリフィ―川

   (左手にある傾いたコップ?風の建物が学会会場)

    アッパーレイク(upper lake)とU字谷

        行きの飛行機から見えた函館

         鰊御殿から石狩湾を望む

 豊平川扇頂部.河床の基盤が露出して”牛群地形”が見える

     ハープ橋の奥に武甲山と中位・低位段丘を望む

  長瀞のポットホール(なぜ壺型にならない?と議論に)

  ホルマリン漬け標本の棚(カエルと目が合ったような)

  博物館前の植物園内「歴史の森」:メタセコイア植物群