徒然なるままに


5★馴染んだ景色が記録される 2024.4

 

 多摩ニュータウンが撮影地となった,という映画があると知り,勇気を出して鑑賞しに出ました(何故勇気がいるのか.仕方がないのです,そこでしか上映されていないのですから).

 自己紹介のページにも書いているように,宇津川は多摩ニュータウンの出身です.子どものころは自転車で,大人(多分大人)になってからは散歩であちこち出向き,さまざまな季節と時間帯の街の姿に触れて過ごしてきました.そんなこともあって,スクリーンに映され続ける街のカットが,どこからどのように撮影されたのかとてもよくわかりました.それはとても新鮮な感覚でした.

 ストーリーには触れませんが,いつか,もし街が姿を変えることになっても,この映画には今のニュータウンがしっかり記録されているから,見ることでノスタルジーを感じられるかもしれないな,と見終えて思いました.実在の地名を用いつつも地理関係が若干脚色されていて,そこはやや残念でしたが,渋谷にいることを忘れて2時間多摩ニュータウンに”没入”できたようには感じられました.

 自分ならどこをどう映しただろう,どこを選んだだろうと思いながらも見ていました.これについてはまた機会があったときに書こうと思います.

映画にも登場した遊歩道の橋.丘陵地形をいかして,谷には車道,尾根の間にはこうした橋がかかり,車と人が程良く離されています.
映画にも登場した遊歩道の橋.丘陵地形をいかして,谷には車道,尾根の間にはこうした橋がかかり,車と人が程良く離されています.

3★肉眼の力 2024.2

 

 飛行機は窓側派です.Googleマップなどで簡単に衛星写真を見ることができる時代ですが,やはり肉眼で地形を捉えられると何とも表現しがたい嬉しい気持ちになります.

 2月頭,好条件の熊本へのフライトを楽しみました.予定していた時刻のフライトが欠航したため,1本早い便に変えたのも功を奏したのか,羽田から静岡頃までは雲がほぼなく,ライティングも程良い撮影タイムでした(隣の席に人がいなかったのでご迷惑をかけずに済みました…というくらい撮り続けていました.後ろの席の方にはすみません…)

 今回特に(心の中で)絶叫したのは,武蔵野台地&相模原台地の段丘たち,関東山地西縁の丘陵群そして富士山の側火山(単成火山;写真)です.新年度の授業で”自慢”できるかな(この凄さと面白さ,伝わるかな).

富士山北西部にある大室山.片蓋山,長尾山もよく見えます.
富士山北西部にある大室山.片蓋山,長尾山もよく見えます.

2★新たな「トトロ岩」の役目 2024.2

 

 能登半島西岸の観光名所のひとつである「トトロ岩」の左耳が此度の地震で崩れた,という記事を読みました(こちら).「剣地権現岩」という正式名称もあるようですが,過去の写真を見ると確かに両耳がピンと立っていますし,さらにどうも目がついて…いる?ようで,トトロ感があります(市の観光課が目をつけたそうです).鳴き砂で有名な琴ヶ浜の北側ですし,観光客の写真スポットになるのは頷けます.
 未訪問のためにネット写真を見ることしかできませんが,やはりトトロの身体(ボディ)が気になります.ちょっと粒々しているよな…とか,割と灰色がかっているよな…とか.パッと見た感じで礫岩トトロかなぁと思いながら地質図を確認.地質図Naviは紙地図も確認できるので大変ありがたいです.1967年刊行の20万分の1地質図幅『七尾・富山』曰く,中新世の「安山岩溶岩および安山岩凝灰角礫岩」となっていました.ということは,おそらく安山岩凝灰角礫岩トトロかな,と思います.

 さて,冒頭の記事では市の観光課の「一段落したら復旧を検討したい」というコメントが掲載されていました.復旧の声も上がると思いつつ「そのままの姿で今回の地震をトトロ岩に伝え続けてもらおう」そうした声も上がるとよいなと個人的には思った次第です.


1★春は今どのあたり 2024.1

 

 新年があけました.が,瞬く間にもう2024年の”24分の1”が過ぎています.とても怖いです.
 思うままに綴ることが難しい新年の幕開けとなりました.何をどう綴りたいのか,書いては消し…を繰り返しています.

 年末から,ふと思い立ってテレビを目覚ましがわりにすることにしました.ちょうど天気予報の時刻に,自動でテレビが起動するようにセット.朝を天気予報から始めてるスタイルはそれなりに性に合っているように思います.ただ年明けからは,東京よりも,北陸の天気が気になってたまらなくなりました.今年は少しでも早く暖かい季節になってほしいのです.春は今,どのあたりでしょうか.

 2024年のこの先が少しでも穏やかでありますように.

新春はやはり梅の写真を好みます               (初雪のなかの紅梅にはどこかいじらしさがあります)
新春はやはり梅の写真を好みます               (初雪のなかの紅梅にはどこかいじらしさがあります)

4★大事なことだと思うので,こだわります 2024.3

 

 学生さんが提出したレポートは,時に大きな刺激と思考のきっかけを与えてくれます.今回,本務先で担当している「地質・岩石学及び実験」という授業のレポートをきっかけに,東所沢にある角川武蔵野ミュージアムを訪ねました.この建物の石材が「花崗岩」だというのです(いくつかのWebサイトでも確認).しかし,レポートにある学生さんが撮った写真を見ると,どうも縞々が目立ち,とても花崗岩には見えません.百聞は一見に如かず,ということで春休みを利用し,強風吹きすさび花粉が大量に舞う中,足を運びました.

 現地で実際に観察してみて,やはり花崗岩ではなく,高温低圧型の変成作用を受けた「片麻岩」だと思いました<写真上・中>.白っぽい(無色鉱物)の層と黒っぽい(有色鉱物)層からなる縞状構造が目立つ点が大きな特徴です.岩石学専門の学芸員さんにも写真を見ていただいたところ,同意見でした.石材名(例えば「御影石」)であれば,ある程度幅広い岩石名を含んでいる可能性もあるのかもしれませんが,「花崗岩」という岩石名で公表されているのはどうにも納得しがたいものがあります.「わぁ,花崗岩ってこんなに縞々なんだー」「花崗岩は火成岩なのにどうして縞々になるんだ?」「え,これ本当に花崗岩?」などと考える人は来館される100人中99人もいないと思いますが(興味のある学生さんには考えてもらいたいですが),物の名前というのは教育面でも思考のきっかけとしても大事なことだと思うので,ここでこだわって書きました.

 ちなみによーく探すとガーネット(ざくろ石)も観察できました<写真下>.図書かアニメかマンガかラノベでちょっと目が疲れたときに探してみるのもよいかもしれません(ただし,同行者含め,他の人に迷惑をかけてはいけません,石材観察時にはこれも大事).

魚津の海岸で観察した片麻岩の礫.             右下の”わかめおにぎり”は花崗岩です.(2017年9月撮影)
魚津の海岸で観察した片麻岩の礫.             右下の”わかめおにぎり”は花崗岩です.(2017年9月撮影)
片麻状構造とよばれる丸い模様も特徴のひとつになります. あ,スケールを入れ忘れた…
片麻状構造とよばれる丸い模様も特徴のひとつになります. あ,スケールを入れ忘れた…
石材に含まれていたガーネットの中でも特に大きめなもの(高校時代の友人撮影).「石材見たいからつきあって」という宇津川の誘いに,気軽にOKしてくれた友人には心からの感謝を.
石材に含まれていたガーネットの中でも特に大きめなもの(高校時代の友人撮影).「石材見たいからつきあって」という宇津川の誘いに,気軽にOKしてくれた友人には心からの感謝を.